カテゴリー:環境
先日ヒルトン東京にある中華料理店「王朝」でディナーを食べてきました。事前にコース料理を注文していましたが、実際どんな内容かは当日までのお楽しみで私たちはワクワクしながら車で向かいました。
ヒルトン東京は新宿の都庁前駅と西新宿駅の間のビル群の一画にあり、1Fではケーキバイキングのお客さんで賑わっており、私たちは2Fのレストランフロアにある王朝を目指します。
王朝は初めて訪れるので2Fに着いて王朝の場所を探していると、少し離れた場所からスッとフロアガイドのスタッフが声をかけてくださり王朝まで案内してくれました。
王朝に着くと窓際テーブル席に座り、二人で談笑しながらコース料理を待ちます。しばらく待つとスタッフからドリンクを注文するかを尋ねられたので、アルコールは控えているためジャスミン茶にしました。ジャスミン茶は香りがしっかり立っていて美味しかったです。
ドリンクを選ぶときメニューは2種類用意されており、一つは従来の紙のメニュー冊子、一つは席についたQRコードを読み込みWebサイトに掲載のメニューがありました。QRコードのものは今回の新型コロナウイルスに配慮して導入しているそうです。
さて、コース料理が運ばれ、お酒を飲む方向けなのかやや濃い味でしたが美味しくいただきました。途中フカヒレスープのような一品が運ばれ、スタッフの方曰く「当店自慢のコーニッシュジャックのスープ」とのこと。実際に食べてみると、スープ自体はフカヒレスープのあの味で、コーニッシュジャックの食感はフカヒレとは思えないですが、それでも新しい中華スープとして捉えると味と食感は美味しかったです。
コーニッシュジャックという名前に耳慣れない方もいると思います。コーニッシュジャックを調べてみると、次のような記述があります。
北部から中央アフリカと一部の南部アフリカの淡水に生息する大型の肉食魚。微弱な電流を放つ。
引用元:ガイアノート 世界の動物・生き物大図鑑
正式名称はモルミルス・コーニッシュジャックといい、エレファントノーズに代表される魚の仲間だそうです。
実物の魚をご紹介できるロイヤリティーフリー写真素材が見つからないため、王立博物館の標本画像でイメージを掴んでください。
博物館の標本をこうやって眺めると、ちょっとキモいですね。(汗)
なぜ、コーニッシュジャックが王朝でも使われているかというと、近年の主にフカヒレ目当てのサメ乱獲によりサメの生息数が減少していることが背景にあるようです。
私たち夫婦はVeganってなに?でもご紹介したように環境問題について勉強し、何か小さなアクションを取れるといいなと思っています。今回の王朝でフカヒレの代わりにコーニッシュジャックという淡水魚が使われていること、また更に調べてみると香港&上海ホテルズが運営するザ・ペニンシュラといった名のあるホテルでも使われ始めている食材です。
私ウマは熱帯魚飼育も趣味で興味があり更に調べてみました。コーニッシュジャック自体は大型淡水魚ですが飼育下では30㎝から60㎝ほど程度までしか育てることが難しく、他の小型から中型の魚と混泳させるとその気性の荒さから攻撃してしまうようです。さらには自然界では湖や川に生息しているようですが、そこでの成魚の主食は魚と甲殻類で大型の魚以外はおそらく食べられてしまうでしょう。
世界のサメ・エイ類の漁獲量の世界的な推移を知りたくなり、日本の水産庁から国際漁業資源の適切な管理の実現を目的とした委託事業をおこなっている水産研究・教育機構の調査データがあることを見つけました。簡単にご紹介します。
世界のさめ・えい類の漁獲量は、FAO漁獲統計資料によると1950年代前半の20万トン台から2000年のおよそ90万トンまで増加し続け、その後減少に転じたものの2005年以降は75万トン前後で横ばいである。2013年の漁獲量は約77万トンであった。
日本のさめ・えい類の漁獲量は1940年代から年々減少し、近年は2万~4万トンで推移している。これは、主に底びき網で漁獲される底生性さめ・えい類の漁獲量の減少が原因である。はえ縄による外洋性さめ類の漁獲量は、1980年代の2万トン台から1990年代の1.5万~2万トン台へと減少したが、2000年代に入って2万トン台に回復し、2005年以降は3万トンを上回っている。さめ類の漁獲量のうち、はえ縄による漁獲が占める割合は1995年以降80~90%である。
外洋性さめ類を漁獲する日本のはえ縄の漁獲努力量は近年減少傾向にあり、特に太平洋で顕著である。しかしながら、漁業国全体の努力量の増減を見ると、(太平洋全体では)2000年代初めまで増加傾向にあり、特に1990年代後半以降の増加が著しかった。つまり、日本が漁獲努力量を減らす一方で、その他の国が漁獲努力量を増やしており、全体として漁獲努力量が増加し、外洋性さめ類にかかる漁獲圧も増加する傾向にある。
引用元:さめ類の漁業と資源調査(総説)
世界の水産資源という全体で見た場合にはサメ・エイの漁獲量だけに注目するわけにはいかないですが、お金になるという理由で乱獲を繰り返してしまい天然資源に多大な影響を与えるという文脈は、多くの天然資源に共通のことのように思えます。今回のヒルトン東京の王朝で提供されたコーニッシュジャックのスープのように、従来乱獲されてきた資源の代替となる資源を使うことで資源消費を分散させる試みは良い流れです。
ヒルトンやザ・ペニンシュラのような世界的なブランドホテルが率先して提供する食材を変化させてきています。市中の料理屋もいずれ追随することになるでしょうが、時間がかかるでしょう。しかし、こうした天然資源の問題は0か100で判断できることではなく、持続的に取り組む必要があります。また局所的な対応ではなく全体的な取り組みも必要です。ホテルのレストランという一部の努力として終わらせるのではなく、様々な角度から努力をしていき地球という奇跡の環境を共に育んでいくことができれば素晴らしいことだと思います。
今回はディナーのちょっとした体験から大きな内容の投稿になりました。毎日が新しい発見の連続でとても充実しています。心にゆとりをもって引き続き生活していきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
Long Life Journeyでは、今後もためになる情報発信を続けていきます。よろしければ定期的にチェックしてみてください。